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【PC自作の新常識】簡易水冷型CPUクーラー結局どこに付けるのが正解なの?

DOS/V POWER REPORT 2022年秋号の記事を丸ごと掲載!

Q:簡易水冷型CPUクーラー結局どこに付けるのが正解なの?

 設置場所や風向によってパーツの冷却性能は大きく変わる

A:ラジエータは前面設置、ラジエータファンは吸気方向がベスト

  • 前面に大きなサイズのラジエータを付けられるPCケースが多い
  • 外気を取り込んでCPUをしっかり冷却
  • ビデオカード周辺のエアフローにも注目

大型ラジエータを組み込める場所は前面と天板が主流

 CPUの発熱が大きくなったこともあり、最近は冷却性能が高い大型のラジエータを備える簡易水冷型CPUクーラーを検討するユーザーが増えてきた。しかし、いったいどこにラジエータを組み込むのがベストなのか。実際の検証結果を踏まえて考えてみよう。

 一般的なミドルタワーケースでは、前面と天板に大型ラジエータを組み込めるようにしているモデルが多い。ラジエータの対応サイズで考えると、36cmクラスに対応するモデルが多い前面配置が有利だ。最近のPCケースでは5インチベイやシャドーベイを前面に搭載しなくなっており、こうした大型の簡易水冷型CPUクーラーを利用しやすい。

 一方で天板の対応サイズは、24~28cmクラスまでということが多い。また天板に設置する場合、ラジエータやファンがマザーボードの上辺部分に被ってしまうことが多く、各種ケーブルの整理作業が難しくなる。とはいえ前面に18cm角以上の大型ファンを装備し、それを天板に換装できないタイプのPCケースの場合、天板設置も有力な候補となる。

 今回はラジエータの設置場所やファンの風向を変更した四つのパターンで、温度変化を計測してみた。

CPU温度とGPU温度を四つの取り付け方法で比較

 今回の検証では、28cmクラスの簡易水冷型CPUクーラーを前面と天板に取り付け、さらにファンの風向を変更して温度を計測した。エアフローのバランスを取るため、2基の14cm角ファンをラジエータのファンとは反対の風向で取り付けている。ファンの回転数はすべて900~1,000rpmに固定し、その変動が冷却性能に影響しないようにした。

 CPU温度がもっとも低かったのは、ラジエータが前面で吸気ファンのパターン1。前面から外気を取り込み、天板から排気するというエアフローだ。GPU温度もトップから2番目であり、バランスのよさが光る組み合わせだった。GPU温度が一番低いのは、ラジエータは天板、ファンは排気のパターン4だ。

 エアフローはパターン1と同じで、前面ファンからの風が、ビデオカード周辺にたっぷり行き渡る状況となる。CPU温度も61℃と低く、温度状況的には甲乙付け難い。ただ設置作業のしやすさを考えると、前面に取り付けるパターン1が有利だろうか。

前面設置でファンは吸気方向がベスト
総合的に考えると、ラジエータは前面設置でファンは吸気、ケースファンを排気方向で組み込むパターンがもっとも冷却性能が高い

 GPU温度が振るわなかったパターン2、3は、いずれも天板から給気して前面から排気というエアフローとなる。ビデオカード本体で風の流れが遮断され、外気がGPUファンの周辺に供給されにくいため、こうした結果になったことが推測される。

3.5インチHDDを組み込むならファンの風を当てたい

 上記の検証を行なったPCの3.5/2.5インチシャドーベイに、5,640rpmのHDD1(Western Digital WD BLUE WD80EAZZ)と、7,200rpm のHDD2(東芝 MN08ADA600/JP)を組み込み、500GBのファイルをHDD1からHDD2にコピーしたときの温度変化も計測してみた。環境はパターン4を利用した。

 コピー中の最高温度は、ファンを当てている場合はHDD1とHDD2がどちらも40℃だったのに対し、ファンの風を当てない場合はHDD1が41℃、HDD2が43℃まで上がった。またおもしろいのがテスト終了30分後の温度で、ファンの風を当てた場合はHDD1とHDD2は38℃に下がったのに対し、ファンの風を当てない場合は温度がまったく下がらなかった。

 3.5インチHDDを利用する場合は、多少なりとも風が当たるようにファンをセッティングしたほうがよさそうだ。

底面近くに装備する3.5/2.5インチシャドーベイには、きちんとファンの風が当たるようにしたい
【検証環境】
CPUAMD Ryzen 9 5900X(3.7GHz)
マザーボードASUSTeK ROG STRIX B550-F GAMING(AMD B550)
メモリCFD販売 W4U3200CM-8G(PC4-25600 DDR4 SDRAM 8GB×2)
ビデオカード玄人志向 GALAKURO GAMING GG-RTX3070Ti-E8GB/DF(NVIDIA GeForce RTX 3070 Ti)
システムSSDWestern Digital WD Black SN750 NVMe WDS500G3X0C[M.2(PCI Express 3.0 x4)、500GB]
データ用HDDWestern Digital WD BLUE WD80EAZZ(SATA 3.0、8TB)、東芝 MN08ADA600/JP(SATA 3.0、6TB)
電源ユニットCorsair RM750x(750W、80PLUS Gold)
CPUクーラーFractal Design Lumen S28( 簡易水冷型、14cm角×2)
ケースファンサイズ KAZE FLEX140 SQUARE PWM 1200rpm(14cm角)×2
室温26.7℃
アイドル時OS起動10分後の値
高負荷時OCCT 11.0.11のPOWER SUPPLYテストを10分間実行したときの最大値
HDDテスト500GBのファイルを2台のHDD間でコピー
Fan Xpert 4の設定ラジエータファンとケースファンを900~1000rpmに固定、背面ファンはAuto
温度使用したソフトはHWMonitor 1.46で、CPUはTemperaturesのPackage、GPUはTemperaturesのGPUの値

[TEXT:竹内亮介]

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